説明を聞いて母は言った。
「わかりました。そちらのご両親がおっしゃるのならそうしましょう。」 僕はほっと息をついた。母は続ける。 「こちらはナツヨさんを頂く立場だから。あちらのご両親のお考えなら、その通りにしましょう。」 母の声は落ち着いていた。いつもより言葉遣いも丁寧だ。機嫌が悪いのだろう。 「でもね、」 と言い、次第に母の調子が変わってくる。 「こんなことじゃ、良くないと思うの。ツユヒコ、分かる? 今回のことであちらのご両親から言われてトラブルになる、っていうことは、私たちがきちんとしていなかったからだと思うの。結婚に対する態度が。ツユヒコが結納をやりたくないと最初に言っておきながら、あちらのご両親に言われて方針を変えるのはあんまり良いことじゃないわね。」 だんだん母の声が険しさを帯びてきた。 「それにしても、なにかしら、たしかナツヨさんもそれに同意してくれたから結納をしないってことにしたのだと思うけれど。 あちらのご両親も結納のことを持ち出してくるなんて、どういうことかしら、全く失礼しちゃうわ。ツユヒコ、気をつけるのよ。だいたい…」 しばらく母の言葉を聞き、適当な頃合いを見つけて僕は話を切り上げようとした。母はまだ何か言い足りないみたいだったけれど、なんとか電話を切り、僕はため息をついた。 電話を掛ける前から想像していたとおり、母は機嫌を損ねた。僕自身が怒られることはなかったけれど、母の怒りの方向があちらのご両親に向いていることが、より気がかりだ。この先、何もトラブルが起きなければ良いが…。 次の日の朝、先日在宅していなかった父にも確認を取るためもう一度実家に電話を掛けた。父は最初、怪訝そうな相づちを打っていたけれど、「向こうのご両親がそうおっしゃるなら」と了承してくれた。 とりあえず了承をもらい、ほっと僕は息をついた。でも、それは安堵のため息とは違うような気がした。
by blgmthk
| 2006-09-09 23:50
| ナツヨを実家に連れていく
|
by blgmthk カレンダー
カテゴリ
全体 はじめに 前書き 出会い じれったい二人 まだまだじれったい二人 肉体関係の話 ナツヨと… プロポーズへ(I) プロポーズへ(II) プロポーズへ(III) 第一部の終わりに 第二部前書き 両親の生い立ち 家族 成長過程(I) 成長過程(II) 成長過程(III) 第二部のおわりに 第三部のはじめに 結婚準備を始める 両親に報告する お互いの両親に会う ナツヨを実家に連れていく お休みのお詫び 以前の記事
2006年 09月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 このブログについて
●リンクはご自由に
●コメントは大歓迎です。お気軽にどうぞ ●私の経験をもとにしていますが、架空の出来事を描いています。どうぞ、フィクションと思ってお読み下さい ●筆者である私のことは、「ツユ」もしくは「ツユヒコ」と呼んでいただければ良いかと思います。 ●詳しくは、はじめに、をお読み下さい。 最新のトラックバック
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||