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結納に関するごたごた(3)

説明を聞いて母は言った。

「わかりました。そちらのご両親がおっしゃるのならそうしましょう。」

僕はほっと息をついた。母は続ける。

「こちらはナツヨさんを頂く立場だから。あちらのご両親のお考えなら、その通りにしましょう。」

母の声は落ち着いていた。いつもより言葉遣いも丁寧だ。機嫌が悪いのだろう。

「でもね、」

と言い、次第に母の調子が変わってくる。

「こんなことじゃ、良くないと思うの。ツユヒコ、分かる?

 今回のことであちらのご両親から言われてトラブルになる、っていうことは、私たちがきちんとしていなかったからだと思うの。結婚に対する態度が。ツユヒコが結納をやりたくないと最初に言っておきながら、あちらのご両親に言われて方針を変えるのはあんまり良いことじゃないわね。」

だんだん母の声が険しさを帯びてきた。

「それにしても、なにかしら、たしかナツヨさんもそれに同意してくれたから結納をしないってことにしたのだと思うけれど。

 あちらのご両親も結納のことを持ち出してくるなんて、どういうことかしら、全く失礼しちゃうわ。ツユヒコ、気をつけるのよ。だいたい…」

 しばらく母の言葉を聞き、適当な頃合いを見つけて僕は話を切り上げようとした。母はまだ何か言い足りないみたいだったけれど、なんとか電話を切り、僕はため息をついた。

 電話を掛ける前から想像していたとおり、母は機嫌を損ねた。僕自身が怒られることはなかったけれど、母の怒りの方向があちらのご両親に向いていることが、より気がかりだ。この先、何もトラブルが起きなければ良いが…。

 次の日の朝、先日在宅していなかった父にも確認を取るためもう一度実家に電話を掛けた。父は最初、怪訝そうな相づちを打っていたけれど、「向こうのご両親がそうおっしゃるなら」と了承してくれた。

 とりあえず了承をもらい、ほっと僕は息をついた。でも、それは安堵のため息とは違うような気がした。
by blgmthk | 2006-09-09 23:50 | ナツヨを実家に連れていく
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