「お父さん、いい人だね。」
タクシーの中で僕はナツヨに話しかける。ナツヨはにっこりして頷く。 「とてもフレンドリーで話しやすかったよ。それに、お父さん、格好良いね。」 「えええええ、そうかなぁ。どこが格好良いのよ。」 「だって、ロマンスグレーで、顔が俳優みたいに整っているじゃない。」 「どうしたらそんな風に思えるの?チュ、おかしいんじゃない?」 「目元とか、やっぱりナツヨのお父さんなのかなって思った。」 「ちょっと、やめてよ、もぉ…」 言葉遣いはちょっと過激だけど、ナツヨの顔は満足そうにほほえんでいる。 「今日はチュもお父さんもおかしかったよ。どうしてずっと研究所のことを話してたの?あんなにくわしく話すこと無いじゃない。」 僕は苦笑する。 「いいじゃない。お父さんに勤め先の事がよくわかってもらえたんだから…。」 「何言っているの。建物の話したって仕方ないでしょう?それに、よりによってトイレの話まで…。初対面なのにあり得ないんだけど。」 言い募るナツヨを僕はまあまあ、と言ってなだめた。 「ねえ、お父さん、僕のこと気に入ってくれたかな。」 「もちろんよ。」 「急に、お、おまえなんかに家の娘はやらん!とか言い出したりしない?」 「ふふふ、大丈夫よ。お父さんもお母さんと同じで裏表のない人だから。」 「そう。じゃあ、安心かな。」 「安心して、安心して。チュなら大丈夫。」 「ありがとう。」 タクシーは上大岡に着いた。ナツヨが金沢文庫に帰るのを見送る、と言ってはみたのだけど、いつものように言い争いに負け、ナツヨに見送られることになった。
by blgmthk
| 2006-03-21 19:24
| お互いの両親に会う
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