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ナツヨの両親に会う(6)

「お父さん、いい人だね。」

タクシーの中で僕はナツヨに話しかける。ナツヨはにっこりして頷く。

「とてもフレンドリーで話しやすかったよ。それに、お父さん、格好良いね。」

「えええええ、そうかなぁ。どこが格好良いのよ。」

「だって、ロマンスグレーで、顔が俳優みたいに整っているじゃない。」

「どうしたらそんな風に思えるの?チュ、おかしいんじゃない?」

「目元とか、やっぱりナツヨのお父さんなのかなって思った。」

「ちょっと、やめてよ、もぉ…」

言葉遣いはちょっと過激だけど、ナツヨの顔は満足そうにほほえんでいる。

「今日はチュもお父さんもおかしかったよ。どうしてずっと研究所のことを話してたの?あんなにくわしく話すこと無いじゃない。」

僕は苦笑する。

「いいじゃない。お父さんに勤め先の事がよくわかってもらえたんだから…。」

「何言っているの。建物の話したって仕方ないでしょう?それに、よりによってトイレの話まで…。初対面なのにあり得ないんだけど。」

言い募るナツヨを僕はまあまあ、と言ってなだめた。

「ねえ、お父さん、僕のこと気に入ってくれたかな。」

「もちろんよ。」

「急に、お、おまえなんかに家の娘はやらん!とか言い出したりしない?」

「ふふふ、大丈夫よ。お父さんもお母さんと同じで裏表のない人だから。」

「そう。じゃあ、安心かな。」

「安心して、安心して。チュなら大丈夫。」

「ありがとう。」

 タクシーは上大岡に着いた。ナツヨが金沢文庫に帰るのを見送る、と言ってはみたのだけど、いつものように言い争いに負け、ナツヨに見送られることになった。
by blgmthk | 2006-03-21 19:24 | お互いの両親に会う
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