このことでナツヨといざこざを起こす必要はあるのだろうか?僕は結納をしようと言い、ナツヨはしないでも良いといっている。でも、元々は僕も結納をしないでおこう、と思っていたのだ。ナツヨの両親に思い入れがある、ということを聞いたので、結納をしよう、ということにしたのだけど、ナツヨがやりたくないのならやめにしてしまおうか。
でも、と僕は思う。ナツヨの両親が、自分たちが出来なかった結納を娘にさせたい、というのであれば、かなえてあげたい。ナツヨのご両親に会って、僕は二人が好きになっていた。 それに、最初は結納をやらない、と言っておきながら方針を変えた僕が、ふたたび結納をやらないことにする、と言った場合、母はどう思うだろうか。電話のことを思い返してみると、さらに話がこじれそうだ。ここまできたら、やっぱり結納をやる方向で進めた方が良い気がする。 さて、よくよく考えてみると、ナツヨは結納をしたいと言っているわけでもしたくないと言っているわけでもない。無理やりここで決めてしまうことはない。日を改めて、ゆっくりとナツヨを説得することにしよう。 僕はナツヨに言った。 「わかったよ、結納のことについてはもう少し考えてみよう。ご両親がどんな風に言っていたのか分からないけど、ナチュが構わないっていうんだったらたぶん結納を絶対しないといけない訳ではないと思う。」 ナツヨが頷く。 「ただ、結納をするのはそちらのご両親の希望なのはたしかだし、ナツヨだって別に結納が嫌なわけではないでしょ?」 ナツヨはちょっと納得いかないような顔をして、でも頷く。僕は続ける。 「もう少し考えてみようよ。結納をやるかどうか。いい方法を選択しよう。そして、良い結婚式にしようね。」 僕はその日ナツヨの両親に会う覚悟をしていた。でも、ちょっと気合いが入りすぎていたみたいだ。 #
by blgmthk
| 2006-09-20 23:45
| ナツヨを実家に連れていく
ナツヨの言葉を聞いて、僕はむっとした。結納のことについてメールに書いてきたのはナツヨなのだ。最初は結納しないで構わない、と言ってくれていたのに、両親が結納について思い入れがあるなんてメールを書いてくる。その話に僕がどれだけあわてたか、分かってくれていない。
とはいえ、そんな不満は心の中にしまっておいて、ナツヨに話した。 「そうなんだ。でも、お父さんもお母さんも結納には思い入れがあるんでしょう。だったら、できるだけやってあげようよ。」 「うーん、それはそうかも知れないけれど…」 ナツヨは考えながら言う。 「でもね、結婚式は私たちがやるのだから、別に私の両親の考えをそんなに気にすることは無いわよ。」 「それは正論だと思うけど、でもね、かならずしも僕達の思い通りに出来るわけでも無いでしょ?」 「どうして」 「どうしてって、たとえば、そうだな、結婚式の費用とか、僕達だけで工面する訳じゃないでしょ?」 「そうね。」 「だとしたらやっぱり親の意見も聞いておくべきじゃないかな。」 「そうかしら。確かにお金は出してもらうかも知れないけれど、親の結婚式じゃないのよ、私たちの結婚式よ。」 「その通り、主役は僕達だよ。だけどね、結婚式だと親も大事な役割を果たす訳じゃない。」 「なによ、また家と家の結婚って言いたいわけ?」 雲行きが怪しくなってきた。ナツヨと言い合いながら、僕は考えた。 #
by blgmthk
| 2006-09-16 23:16
| ナツヨを実家に連れていく
父に確認を取った後、僕はナツヨへメールを書いた。
「結納のこと、両親に伝えました。昨日も言ったけど会えるかな?帰りに、僕が金沢文庫まで行くよ。」 ナツヨからは昼前に返事が来ていた。 「夕方に金沢文庫の珈琲館でどう?何時頃にこれるか教えてね。」 定時ちょっと過ぎに会社をでた僕は、横浜で京急線に乗り換え金沢文庫に向かった。 金沢文庫で電車を降りて思う。そういえば電車でこの駅来たのは初めてかも知れない。まあ、車でナツヨを迎えに金沢文庫に来たことはあるけれど。これから結婚するまでに何度この駅で降りることになるのだろうか。 駅から数分歩くと、スポーツクラブの入った建物が見えてくる。その一階が待ち合わせの喫茶店だ。 喫茶店に着くと、ナツヨはすでに待っていた。 「お待たせ。待った?」 「ううん、ちょうど今飲み物が来たところ。」 ナツヨの目の前にはジュースがおいてある。 「何飲んでいたの?」 「フルーツミックスジュース。」 僕もそれを頼むことにした。 「それで、今日は何?」 「あ、結納のことなんだけど。」 僕は両親に電話して、結納を行うことを確認したとナツヨに伝えた。もちろん、母が機嫌を損ねたことは話さずに。 「それでね、ご両親に説明にうかがいたいのだけど…」 「そんな、そこまでする必要ないわよ。」 「でも、結納をして欲しいって…」 「そんなにあわてること無いわよ。父も母も忘れているわよ。」 #
by blgmthk
| 2006-09-13 23:35
| ナツヨを実家に連れていく
説明を聞いて母は言った。
「わかりました。そちらのご両親がおっしゃるのならそうしましょう。」 僕はほっと息をついた。母は続ける。 「こちらはナツヨさんを頂く立場だから。あちらのご両親のお考えなら、その通りにしましょう。」 母の声は落ち着いていた。いつもより言葉遣いも丁寧だ。機嫌が悪いのだろう。 「でもね、」 と言い、次第に母の調子が変わってくる。 「こんなことじゃ、良くないと思うの。ツユヒコ、分かる? 今回のことであちらのご両親から言われてトラブルになる、っていうことは、私たちがきちんとしていなかったからだと思うの。結婚に対する態度が。ツユヒコが結納をやりたくないと最初に言っておきながら、あちらのご両親に言われて方針を変えるのはあんまり良いことじゃないわね。」 だんだん母の声が険しさを帯びてきた。 「それにしても、なにかしら、たしかナツヨさんもそれに同意してくれたから結納をしないってことにしたのだと思うけれど。 あちらのご両親も結納のことを持ち出してくるなんて、どういうことかしら、全く失礼しちゃうわ。ツユヒコ、気をつけるのよ。だいたい…」 しばらく母の言葉を聞き、適当な頃合いを見つけて僕は話を切り上げようとした。母はまだ何か言い足りないみたいだったけれど、なんとか電話を切り、僕はため息をついた。 電話を掛ける前から想像していたとおり、母は機嫌を損ねた。僕自身が怒られることはなかったけれど、母の怒りの方向があちらのご両親に向いていることが、より気がかりだ。この先、何もトラブルが起きなければ良いが…。 次の日の朝、先日在宅していなかった父にも確認を取るためもう一度実家に電話を掛けた。父は最初、怪訝そうな相づちを打っていたけれど、「向こうのご両親がそうおっしゃるなら」と了承してくれた。 とりあえず了承をもらい、ほっと僕は息をついた。でも、それは安堵のため息とは違うような気がした。 #
by blgmthk
| 2006-09-09 23:50
| ナツヨを実家に連れていく
さて、面倒なことになった。一応こちらの親にも説明しておかなければならないだろう。
母に電話するのはいやだった。結納をしないと言ったのは僕で、母はどちらかといえば結納をした方がいいのではないか、という意見だった。ナツヨの家で結納を執り行う、という条件で。 母に電話をするとどんなことが起こるか、掛ける前からある程度想像がついた。でも、掛けないわけには行かない。 「もしもし」 「もしもし?ツユ君?」 「うん、ぼくだけど。」 電話を掛けてはみたものの、なかなかそのものズバリの話題に入っていくことが出来ない。しばらく世間話をした後に、本題に入った。 「それでね、…」 「どうしたの?」 「あのね、結納の件なんだけど…」 「なに?結納がどうしたの?」 「結納ね、やっぱりやることにしたいんだ。」 「まあ、どうしたの?良いけど、結納はしないって言っていなかった?」 「うん。だけど、やっぱりやることにしようかなって…」 「ちょっと、どういうこと?説明しなさい。」 母の声音が変わってきた。僕は一度つばを飲み込み、そしてナツヨからもらったメールの説明をした。ナツヨが彼女の両親から結納のことについて聞かれたこと。ナツヨの親が、結婚の時に彼らの両親といざこざがあったために、結納が出来なかったこと。 「そんなわけで、ナツヨのご両親は結婚について、思い入れがあるみたいなんだよ。だからね、出来れば結納をしておきたいな、と思っているんだ。」 #
by blgmthk
| 2006-04-13 23:17
| ナツヨを実家に連れていく
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