ナツヨの親にあった報告と、ナツヨを連れて帰る予定の連絡のために、母に電話を掛けた。
「… それでね、結局ナツヨがそちらに泊まることにするって。」 「まあ、うれしい。歓迎するからね。で、何泊になるのかしら。」 「二泊するつもり。四月二十五日の金曜日にナツヨを連れて帰ります。二泊して、日曜日に横浜に戻る。」 「はい。二泊ね。でも、もう少し泊まっていっても良いのよ。そのあとすぐにゴールデンウィークでしょ?」 「うーん、まあ、ナツヨも最初だから。二泊くらいが良いんじゃないかな。緊張するだろうし。」 「そんな、緊張する必要なんて無いじゃない。ナツヨさん、うちの人になるわけだから、緊張なんてしてたら…」 「そりゃこちらは緊張しないけれど、でもね…。今後何度も帰るから、今回は二泊で良いでしょう。 あ、それでね、ナツヨのご両親に会ってきたよ。」 「どうだった?」 「うん、楽しかった。会話も弾んだし…」 僕はナツヨの両親と会ったときのことを話した。 「そう。それは良かったわね。それで、ナツヨさんの家はどんなところだった?」 「ああ、お会いしたのはレストランだったよ。それが素敵なレストランで…」 「あら、家に呼ばれたのではなかったの?」 「うん。レストランで会った。」 「まあ、あちらのご両親、どういうつもりなのかしら?」 僕は思いだした。結納の事を話したときに、母がやけに相手の家のことについて気にしていたことを。そのときに、このことについては気をつけようと心に決めたことを。 嫌な感じがした。 「ちょっとナツヨの家でいろいろあったみたいで…」 「いろいろってどういうことよ?」 「いや、まあ、くわしくは聞かなかったけれど、こんどお家に呼んでいただけるって言っていたから…」 「本当かしら。とにかくね、お家に呼べない事情が何かあるってことよ。ツユヒコ、気をつけなさいよ。あなたは本当に…」 「わかったわかった。とにかく、今度はお家にお邪魔できるから。大丈夫だから。」 「大丈夫じゃないわよ。家に呼べないってことは何か隠しているって事じゃない…」 母はなおも言い募る。延々と相手の親への不信感を口にする。十分くらい母の小言を聞いていただろうか。でも、僕にはもっと長い時間に感じられた。 最後に母の言うことをのらりくらりとかわしつつなんとか電話を切った。 電話を切ったとき、どっと疲れが出た。
by blgmthk
| 2006-03-22 22:24
| お互いの両親に会う
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